- 2007-11-04
- 2006 Laos & Hanoi
以下は、おとといメインサイトにアップした「バンビエン、自転車で巡れば」のエピローグのようなものです。
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ソン川のほとりでラオス最後の夕日を見届けると、歩いて町に戻った。
すでに通りは闇に包まれ、ところどころネオンがきらめいていた。
どこからか、騒がしい音楽が洩れてくる。
小さなバンビエンの町は、ゲストハウスとレストランで成り立っていると言っても大げさではないだろう。夜になると人工的な光と音で彩られ、およそ200メートル四方のその一画だけがあたかもひとつの島のように、周囲の静寂と暗闇から浮かび上がる。
その島の縁にたどり着くと、一軒のレストランが目に入った。看板には、「END OF THE WORLD」とあった。
世界の終わり。
バンビエンの前に滞在していたルアンパバーンでは、村上春樹の『辺境・近境』を読み返していた。ぼくくらいの世代の旅行者には思い当たるところが多々ある旅のつらい現実が描かれており、そう、そうだよなあとしみじみ読んでいたこともあって、『世界の終りとハードボイルド・ワンダーランド』を連想させる「END OF THE WORLD」が暗闇から出現したことがなんだか偶然とは思えず、気がつくとその店にあがりこんでいた。
ビーフのラープとカオニャオ。そしてもちろんビアラオ。このトリオは史上最強だ。
さらに春巻き。春樹にちなんで春巻きを注文......というわけではない。
今夜の食事はカロリー高そうだ。でも、旅の終わりだし、世界の終わりだし。
ちなみに、これは池澤夏樹などにも言えるんだけど、村上春樹って小説より旅ものや語学もののほうが面白いと思いませんか? 『辺境・近境』もそうだし、『遠い太鼓』、『やがて哀しき外国語』、『翻訳夜話』などなど。それと、これは柴田元幸の著作になるが『翻訳教室』のなかで村上春樹とジェイ・ルービン(村上作品の英訳者)が翻訳について静かに熱く語っているんだけど、こうした旅や翻訳の話のほうが読んでいて楽しいと個人的には思ってしまう。
最後の夜だからと、もう一軒寄ることにした。
通りを進む。とあるカフェではパッカーらしき欧米の男たちがサッカーの衛星放送を観ている。向かいのカフェでは白人の女の子が「フレンズ」を観ながらげらげら笑っている。バンビエンまで来てオバカドラマを観てる場合か。ここは世界の終わりなのに。
さらに歩き、テレビがなくて空いてそうな店に入った。
頼んだのは、「サンライズ」というカクテル。そして締めは、赤いラオワイン。
一口飲んでみる。甘い。甘ったるい。
が、この甘さが、旅の終わりの切なさをほどよく中和してくれるような気もした。
ほのかな湿気を含んだ甘い空気。甘く輝くネオン。甘く香るワイン。
アジアのやさしい甘さに身も心も抱かれて、世界の終わりの夜はふけていく。
そして雨期明け間近のラオスの旅も、明日で終わる。