- 2008-10-25
- 2006 Laos & Hanoi

VANG VIENG PENTAX MZ-3, FA77mm LIMITED
東南アジアはもうすぐ雨期が明け、旅しやすい乾期が始まりますね。
2年前、ちょうどその境目の季節にラオスを訪れました。
帰国後、旧ブログとメインサイトに旅行記を連載していたのですが、肝心の最終編をまだ書いていませんでした。時期的にぴったりなので、ここで一気に完結させてしまおうと思います。
前回までの旅行記や、文中で言及しているオークパンサーなどについては、
カテゴリーの「2006 Laos & Hanoi」か、メインサイトのラオス編を見てください。
* * *
今日はバンビエンを発つ日。そして、ラオスを去る日。
宿を出て、通りの向かいにあるカフェに入る。
ラオス最後の朝だ。たっぷりと食べよう。
頼んだのは、バナナパンケーキとフルーツシェイク。そしてラオコーヒー。
爽やかでありながらどこかけだるくゆるいアジアの朝に、この甘さが心と体をいっそうゆるやかにしてくれる。

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10時半にバンビエンを出発した「VIP」とは名ばかりのオンボロバスは、パンクで一度だけ緊急停車しただけで、無事ビエンチャンにたどり着こうとしていた。
1週間前に初めてラオスに降り立ち、首都ビエンチャンに足を踏み入れたとき、一国の首都にしてはまあ小さくて穏やかだなあという第一印象を抱いたのだが、ルアンパバーンまで一気に北上し、そこから山道をうねうねと下り、のどかなバンビエンを経て戻ってきた今では、ビエンチャンの町でさえ、異様に大きくこの目に映る。
町に入ると、バスは空港の近くて停車した。何人かの欧米人旅行者が降りていく。ぼくも彼らと一緒に降りてもよかった。搭乗するハノイ便の出発まで、あと3時間ほどしかない。けれども、ラオスを発つ前に、もう一度味わっておきたいこと、やっておきたい儀式があった。
終点のバスターミナルに到着すると、トゥクトゥクに乗り換える。町の中心部で降りると、見覚えのある道を南へとたどる。この前泊まった宿の前を通り過ぎる。もうすぐ、悠久のメコンと再会できる。
大きな通りを渡ると、もうそこはメコンを望む土手だ。
その土手に出た。予想を裏切る光景に、しばし呆然と立ちつくしてしまった。
そこは茶色い土と小石で覆われているだけの、だだっ広い空き地だった。
1週間前は、この土手を埋め尽くさんばかりに露店や屋台がぎっしり立ち並び、移動遊園地の観覧車が青空の中をゆっくりと回り、数え切れない人が行き交っていたというのに。あたかも、忽然と姿を消してしまったかのようだ。いったいどこへ消えてしまったのだろう。

しばし考えた末、納得のいく理由が浮かんできた。
数日前、ルアンパバーンで大きなお祭りと出会った。ぼくが初めてラオスを、首都ビエンチャンを訪れたのは、そのお祭りを目前に控え、国中が期待であふれていた時期だったのだ(それが「オークパンサー」という雨安居明けを盛大に祝うお祭りだと知ったのは帰国後のことだった)。そうとも知らずに訪れたぼくは、メコンの岸辺のにぎわいにとまどいを覚えつつもこれが普通なのかもしれないと思った。が、実はそれが「ハレ」の騒ぎであり、今こうして目にしている光景こそが「ケ」、つまり日常なのだということに、ようやく気がついたのだった。
あのにぎわいの中にもう一度身を浸してからこの地を離れようと思っていただけに、なんだかがっかりしたような、最後に本来の静かな姿と出会えたのだから、やっぱりうれしいような、そんな相反する感情を抱きながら、けれどもこれだけでは旅は終われないと、吹きさらしの土手を進む。ようやく、一軒のお店がポツリとあるのを見つけた。メコンに一番近いテーブルに腰を下ろす。
すぐ目の前を流れるメコンは、1週間前と何ら変わらぬ表情でそこにあった。
このゆるやかな流れも見納めか。名残を惜しんでいるところに、料理が運ばれてきた。
獲りたて、焼きたての魚、そしてもちろん、ビアラオ。
あー、もう、これさえあれば。
メコンを眺めながらビアラオ。最後にもう一度これを味わいたかった。

メコンとビアラオ、これに沈みゆく夕日があれば最高のトリオが結成される。夕暮れまで、あとほんの数時間。けれども残念ながら、その頃にはすでに機上の人になっている。トリオの共演を楽しむのは、またいつの日かということにしておいて。
「メコンに乾杯」
グラスに残ったビアラオを、飲み干さずに土に返す。
いつかまた舞い戻ることができるよう祈って。
今とまったく変わらないメコンの流れと対面できることを信じて。

雨期の終わりのラオスを旅した。
湿り気を帯びたアジアの空気に包まれ、
メコンのたゆたいに包まれ、
真っ赤な夕日に包まれ、
出会った人たちの笑顔に包まれ、
ビアラオの軽やかな泡に包まれ、
祭りの光と音と興奮に包まれながら。
身も心も、ゆるゆると。
この季節にこの地を旅することができて、本当によかったと思う。
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