2006 Laos & Hanoi Archive

ハノイの夜

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ラオスで最後の夕日を眺めたのは、メコンのほとりではなく、
首都ビエンチャンの空港からだった。


およそ1時間後、ハノイに降り立ったときには、日はとっぷりと暮れていた。
空港からハノイの市街へ。人と、車と、スーパーカブの往来が激しさを増していく。
旧市街の狭い路地に割って入ると、喧噪と混沌はその極みに達する。

ゆるくて穏やかなラオスとのあまりの違いに面食らうが、ああ、この無秩序ぶりも、熱気も活気も、
たしかにアジアなのだなと、心の別の部分がざわめき始める。

宿を確保して、夜の旧市街を散策する。
歩道に沿って並ぶ屋台の1軒でフォーをすすり、ビアホイをグイッとやる。
喧噪と混沌のハノイ。けれども、魅惑の液体に包まれ、湿り気を帯びた空気と闇に
溶け込んでいく感覚は、ラオスにいるときとさほど変わりない。


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ラオス編完結:メコンに乾杯

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VANG VIENG    PENTAX MZ-3, FA77mm LIMITED


東南アジアはもうすぐ雨期が明け、旅しやすい乾期が始まりますね。
2年前、ちょうどその境目の季節にラオスを訪れました。
帰国後、旧ブログとメインサイトに旅行記を連載していたのですが、肝心の最終編をまだ書いていませんでした。時期的にぴったりなので、ここで一気に完結させてしまおうと思います。
前回までの旅行記や、文中で言及しているオークパンサーなどについては、
カテゴリーの「2006 Laos & Hanoi」か、メインサイトのラオス編を見てください。


        *        *        *


今日はバンビエンを発つ日。そして、ラオスを去る日。

宿を出て、通りの向かいにあるカフェに入る。
ラオス最後の朝だ。たっぷりと食べよう。
頼んだのは、バナナパンケーキとフルーツシェイク。そしてラオコーヒー。
爽やかでありながらどこかけだるくゆるいアジアの朝に、この甘さが心と体をいっそうゆるやかにしてくれる。


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GR DIGITAL


10時半にバンビエンを出発した「VIP」とは名ばかりのオンボロバスは、パンクで一度だけ緊急停車しただけで、無事ビエンチャンにたどり着こうとしていた。

1週間前に初めてラオスに降り立ち、首都ビエンチャンに足を踏み入れたとき、一国の首都にしてはまあ小さくて穏やかだなあという第一印象を抱いたのだが、ルアンパバーンまで一気に北上し、そこから山道をうねうねと下り、のどかなバンビエンを経て戻ってきた今では、ビエンチャンの町でさえ、異様に大きくこの目に映る。

町に入ると、バスは空港の近くて停車した。何人かの欧米人旅行者が降りていく。ぼくも彼らと一緒に降りてもよかった。搭乗するハノイ便の出発まで、あと3時間ほどしかない。けれども、ラオスを発つ前に、もう一度味わっておきたいこと、やっておきたい儀式があった。

終点のバスターミナルに到着すると、トゥクトゥクに乗り換える。町の中心部で降りると、見覚えのある道を南へとたどる。この前泊まった宿の前を通り過ぎる。もうすぐ、悠久のメコンと再会できる。

大きな通りを渡ると、もうそこはメコンを望む土手だ。
その土手に出た。予想を裏切る光景に、しばし呆然と立ちつくしてしまった。
そこは茶色い土と小石で覆われているだけの、だだっ広い空き地だった。

1週間前は、この土手を埋め尽くさんばかりに露店や屋台がぎっしり立ち並び、移動遊園地の観覧車が青空の中をゆっくりと回り、数え切れない人が行き交っていたというのに。あたかも、忽然と姿を消してしまったかのようだ。いったいどこへ消えてしまったのだろう。

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しばし考えた末、納得のいく理由が浮かんできた。

数日前、ルアンパバーンで大きなお祭りと出会った。ぼくが初めてラオスを、首都ビエンチャンを訪れたのは、そのお祭りを目前に控え、国中が期待であふれていた時期だったのだ(それが「オークパンサー」という雨安居明けを盛大に祝うお祭りだと知ったのは帰国後のことだった)。そうとも知らずに訪れたぼくは、メコンの岸辺のにぎわいにとまどいを覚えつつもこれが普通なのかもしれないと思った。が、実はそれが「ハレ」の騒ぎであり、今こうして目にしている光景こそが「ケ」、つまり日常なのだということに、ようやく気がついたのだった。

あのにぎわいの中にもう一度身を浸してからこの地を離れようと思っていただけに、なんだかがっかりしたような、最後に本来の静かな姿と出会えたのだから、やっぱりうれしいような、そんな相反する感情を抱きながら、けれどもこれだけでは旅は終われないと、吹きさらしの土手を進む。ようやく、一軒のお店がポツリとあるのを見つけた。メコンに一番近いテーブルに腰を下ろす。

すぐ目の前を流れるメコンは、1週間前と何ら変わらぬ表情でそこにあった。
このゆるやかな流れも見納めか。名残を惜しんでいるところに、料理が運ばれてきた。
獲りたて、焼きたての魚、そしてもちろん、ビアラオ。

あー、もう、これさえあれば。

メコンを眺めながらビアラオ。最後にもう一度これを味わいたかった。


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メコンとビアラオ、これに沈みゆく夕日があれば最高のトリオが結成される。夕暮れまで、あとほんの数時間。けれども残念ながら、その頃にはすでに機上の人になっている。トリオの共演を楽しむのは、またいつの日かということにしておいて。

「メコンに乾杯」

グラスに残ったビアラオを、飲み干さずに土に返す。
いつかまた舞い戻ることができるよう祈って。
今とまったく変わらないメコンの流れと対面できることを信じて。

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雨期の終わりのラオスを旅した。
湿り気を帯びたアジアの空気に包まれ、
メコンのたゆたいに包まれ、
真っ赤な夕日に包まれ、
出会った人たちの笑顔に包まれ、
ビアラオの軽やかな泡に包まれ、
祭りの光と音と興奮に包まれながら。

身も心も、ゆるゆると。

この季節にこの地を旅することができて、本当によかったと思う。

マレー半島を北上せよ(7) 路地裏へ

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RICOH GR21


路地裏に足を踏み入れると、これまで目に映っていたさまざまな色が消え、
まばゆい光も隠され、ざわめきもいずこかへ去り、
代わりに、強くて濃い影と、濃密な空気と、不思議に懐かしい静けさと香りが漂い始める。

世界の終わりと旅の終わり

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以下は、おとといメインサイトにアップした「バンビエン、自転車で巡れば」のエピローグのようなものです。

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バンビエンを自転車で行けば

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雑木林を抜けると、視界が一気に開け、いっそうまばゆい光と鮮やかな色に包まれた。左右には緑の田んぼがさあーっと広がっている。正面には、やや西に傾いた太陽が衰える気配も見せず、強烈な熱と光を放っている。バンビエンの村からも望むことができる奇怪な山々との距離もいつの間にかぐっと縮まり、予想外の迫力でそびえている。

道ばたに自転車を止めて眺めを楽しんでいると、学校帰りの子供たちがやってくる。緑の稲穂の波を、白い制服が行き交う。まぶしく、どこか懐かしい。

再び自転車にまたがった。目の前を、制服を着た二人の子供が歩いている。兄弟かもしれない。自転車にも、トラクターにも乗らない。ぼくたちは元気に仲良く歩いて下校中、というような、たくましく、そしてほのぼのとした雰囲気が背中から伝わってくる。

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